グラミン銀行とはどのような銀行か?

バングラデシュには、多くの貧困農民が住んでいます。これらの人達でも、ごくわずかな元手さえあれば、それをもとに所得をあげる仕事を始めることができます。たとえば、鶏を飼ったり、牛を飼ったり、ミシンを手にいれて、それで服を作ったりできます。

しかし、彼等・彼女等を相手にしてくれる銀行はありません。そこでユヌス博士は、こうした貧困農民を対象に、なかでも女性を対象に、小規模融資の方法を考え出しました。5人一組になって、相互に連帯責任をとったり、あるいは相互に助け合ったりするしくみを作り出しました。

その結果、グラミン銀行は現在では230万人(そのうち94%は女性)に、総額23億ドルを融資するまでに成長しました。この功績が認められて、ユヌス博士には「アジアのノーベル賞」といわれる「マグサイサイ賞」をはじめ、世界食糧賞など、多数の国際的な賞が授与されました。



 
この女性はグラミン・バンクから、融資を受けることによって、新しい所得を手に入れる道が開かれました。普通の銀行は、担保もない、返済してくれかどうか保障もない、貧しい農民に資金を貸してくれません。グラミン・バンクはこういう農民を対象に、小額融資(Micro―credit)を行い、経済的自立の道を開いています。



 
グラミン銀行から融資を受けるには、文字の読み書き、計算ができなければいけません。そうでなければ、自分できちんと商売上の契約を結んだり、売り上げやかかった費用の計算ができないからです。そこでメンバーは、こういう所で文字の読み書き・計算を習っています。読み書き算の能力は、経済的な自立に欠かせない、大切な基礎能力です。これまで、こういう学習をする機会が、なかったのです。



 
今丁度、ユヌス博士の自伝が翻訳され、早川書房から出版され、店頭に並んでいます。皆さん。この機会にぜひ手にとってみてください。そこには博士の思想、これまでの実践が詳しく語られています。

また1998年10月31日の朝日新聞は、博士とグラミンバンクのことを取り上げています。

そのインタービューのなかで博士は「自分は市場経済が一番よい制度だと思っているが、問題はこの制度を動かしている原動力が個人的な利益しかないことで、自分としては社会的利益こそが原動力になるよう、社会のしくみを変えて行きたい」と語っています。

 



 
 WHAT IS GRAMEEN BANK?グラミン銀行とは?

 

「グラミン」はベンガル語で「村」という意味である。だから「グラミンバンク」は「村の銀行」ということになる。グラミンという名前にも表れているが、グラミンの仕事のほとんどはボロワー(Borrower)のいる村で毎週「センターミーティング」を行い、ボロワーを指揮することである。「センター」は5人から成るグループが6〜8集まったもの (30〜40人で構成される) で、村ごとにある機構である。土地を持っていない、またはほとんど持っていない村人がグループを構成する。彼らはセンターを通して手頃な低金利で小額のお金を借り、営利活動を行う。

 

グラミンバンクは自分自身を以下のように紹介している。

「クレジットを切実に必要としている地方村落の人々はたいていバンクシステムから疎外された状態にある。チッタゴン大学の経済学の教授であるムハマドユヌス博士は実行可能なバンクネットワークを地方の人々にもたらせる可能性を探り、その骨組みの計画をするために、1976年に活動研究のプログラムを始めた。もし土地を持たない人々が適切な期間と状況の中で資金を運用できるようになったら、数百万もの貧しい人々がわずかな努力を積み重ねて、とてつもなく大きな発展を遂げられるだろうとユヌス教授は考えた。」

 

この実験は「グラミンバンクプロジェクト」と名づけられ、下のような目的とともに形となっていった。

1) 貧困層に対し、銀行の設備を拡張する。

2) 金貸し人による貧困層への搾取を排除する。

3) 地方における莫大な未開発の人資源に対して自ら営利活動を行う機会をつくる。

4) 教育を受けていない人たちを何らかの形式を持った組織の中へ連れて行き、彼らに

その形式を理解し、使うことができるようにさせる。そして、そこから相互協力を

通して社会政治や経済の強さを見つられるようになってもらう。

5) 昔の悪循環「低収入→低貯蓄→低投資→低収入」から発展的システム「低収入→ク

レジット→投資→より多くの収入→より多くのクレジット→より多くの投資→より

多くの収入」へと変える。

 

このプロジェクトは1976〜79年の間、チッタゴン地方のジャブラ村周辺でその強さを証明した。その後、バングラデシュバンクをスポンサーとし、すべての国営銀行とBKBから援助を受けて、1979年タンゲイル地方に広がった。タンゲイルで成功した後は、1982〜3年にかけてこのプロジェクトはダッカ地方、ラングパー地方、パツアクハリ地方に広がった。

1983年12月グラミンバンクプロジェクトは「グラミンバンク(以下GBと略す)」の名で独立した銀行となった。今日GBは貧困層自身が所有している。GBのシェアの90%は貧困層が占めており、残りの10%は政府が所有している。経営ディレクター(かつ、GBの責任者)は政府に任命される。海外との交換取り引きを除けば、GBは研究、調査、投資、客へのアドバイスを含めた総括的な銀行としての活動を実行する権限を与えられている。
 

お金の借り手は土地を持たない人々で、彼らは担保なしの貸付金を受けるために5人組を形成する。グループメンバーは同じような心と似たような経済的、社会的背景を持たなければならない。家族が0.5エーカー以下の耕作地しか持たない人、あるいは家族の財産の価値がその地区で中価値の1エーカーの市場価値にも満たない人なら誰でも営利活動をするためにGBからお金を借りる資格がある。

ボロワーはお金を借りる前にGBの考え方、規則、手順について1?2週間のトレーニングを受けなければならない。そして、グループとして認められるためには口頭試験に合格しなければならない。新しいメンバーは試験期間中にGBの規則や手順を理解し、自分の名前を書けるようになって、その誠実さや真剣さをGBのスタッフに納得させなければならない。

各グループはリーダーと補佐を選出する。参加を義務づけられたすべてのメンバーを毎週のミーティングに参加させるようにするのが彼らの仕事である。同じ村の同性で構成されたいくつかグループ(最近は8グループが最大)は「センター」に集まる。グループリーダーの中から「センターチーフ」と「チーフ補佐」が選ばれる。彼らは毎週のセンターミーティングを仕切り、貸付金の申し入れを伝え、お金の動きを管理し、GBのワーカーの仕事を手伝っている。
 

GBは貯蓄を二つに分類している。一つはグループ資金、もう一つは緊急資金である。各ボロワーは一週間に一タカをグループ資金に払っている。さらに、お金を借りるとき、額の5%は自動的に差し引かれ、保証金としてグループ資金に入れられる。その上、借り手はそれぞれ総収益の4分の1相当額をGBに払う。これは緊急資金(注1)に入れられる。この資金は生活保険金として使われる。

GBの支店はいつも9人のスタッフが仕事を行っている。支店長、補佐と6人のワーカー(そのうち3人は女性であることが理想的)そして、警備員である。GBの規則では銀行は人を来させるのではなく、人のところへ出向くべきであるとされる。ほとんどの銀行関連の交渉(お金の融資は除く)はバンクワーカーが参加するセンターミーティングで行われる。支店は資金が必要なときに10%の率でヘッドオフィスから借金する。そして、貸すときは20%の率で貸している。

GBは12のゾーナル(Zonal)オフィスがある。ゾーナルオフィスとブランチオフィスの間にはエリアオフィスがある。8〜10のエリアオフィスが一つのゾーンにある。一つのエリアオフィスは10〜15のブランチオフィスを管轄とする。

1993年8月の終わりにはGBは1035の支店を持ち、1.67百万人のボロワー(そのうちの94%は女性)に出資した。その融資額は743百万ドルで、返済率は98%である。グループメンバーは50百万ドル以上貯蓄をためた。

GBメンバーはお金を借りて、500種以上の営利活動を行ってきた。平均的貸付額は3、000タカ(約75ドル)。GBは最近月に約20百万ドルを貸している。この事から貧しい人々は銀行を利用することができ、実はお金がある人よりも規律の正しいボロワーであるということがわかった。ただし、彼らを銀行システムになじませるためには適切な分配と回収のメカニズムが必要である。

通常、個人への貸し付けは最大でも8000タカ(約200ドル)を超えないが、メンバーは共同して集合的な事業を行うためにより大きなお金を借りられる。このように集められたお金は100種類以上の異なる物事に使われる。具体的には、掘り抜き井戸、製粉機、石油工場を扱ったり、池や土地の賃貸契約をしたりする。
 

GBは貧困層にハウジングローン(Housing Loan)を紹介している。十分な住処は人が基本的な活動を行うために必要である。家を持つことによって彼らはより良い生活を夢見ることができるような自信と威厳を得られるのだ。GBがグループメンバーにハウジングローンを提供しようと考えるのは彼らの家が仕事場として使われることも多いという理由もある。GBのメンバーはシンプルなブリキ屋根の家を建てるために20000タカ(約500ドル)まで借りることができる。ハウジングローンは週単位の分割払いで5?15年で返済される。経済活動に伴い、GBのメンバーは社会的かつ健康的な環境に気遣えるようになる。これは公衆衛生、健康管理、栄養、教育、家族計画、持参金(ダウリ)の必要のない結婚、相互協力などのことである。これらのことは「16の決意」としてまとめられており、GBメンバーの間では良く知られている。多くのGBメンバーはこの16の決意を簡単に暗唱することができる。

GBのボロワーのついての別の資料を見ると彼らの収入は上がっており、財産基盤は拡大していることが分かる。GBが貧しいボロワー、以前貧しかったボロワーにもたらした良い影響は権威機関(世界銀行、食料政策研究機関(IFPRI)、バングラデシュ開発研究機関(BIDS)など)により行われているたくさんの研究の中に記録されてきた。

GBは貧困を減らすことに成功し、世界中の人々や機関を勇気づけてきた。ここ10年で100カ国から4000人以上の人がグラミンのトレーニングプログラムを受けた。訪問者の何人かは母国へ帰った後、母国の貧しい人々に益をもたらすために、GBをモデルとして模倣した。ここ10年の間、58カ国で総計223の模倣プログラムが確立しており、それらを総合してみると、クレジットをしているボロワーは数十万人に達する。
 

注1)1991年、メンバーの緊急資金への寄付は最初に借りた1000タカを除いて、1000タカ借りる毎に5タカ支払うことになり、負担は軽減された。

 
 
・ グラミン・バンク統計(1998年5月)

支店の数                                    1112店

携わっている村の数                38551村

センターの数                                65960

BOROROWERの数                               2334780人

            男             124620人

            女              2210160人

グラミンハウジングローンで建てた家の数        438764軒

累積融資額                                   2408百万ドル

今月の累積融資額                             34百万ドル

ハウジングローンの累積融資額                  169百万ドル

今月のハウジングローンの累積融資額            1.7百万ドル

グループ資金の累積貯蓄額                      177百万ドル

総貯蓄額(グループ資金を除く)                  16百万ドル